
研究紹介
触れて気づく」を身近にする:舌癌啓発モデル「べろたん」を動かそう
舌癌は、初期段階では自覚症状が乏しく、見た目だけで異常に気づくことが難しい場合があります。そのため早期発見には、視覚的な観察に加えて、硬結などを触って確かめる触覚的な評価が重要です。一方、一般の人が舌癌の硬さや触れ方を体験できる教材は、まだ十分に普及していません。本研究では、山形大学医学部石川恵生先生発案のもと、舌癌への関心を高め、触診体験を身近にするため、やわらかな医療啓発モデル「べろたん」を開発しました(山形大学医学部石川恵生先生のべろたんご紹介サイトはこちら)。さらに、外観デザインと動きを加えることで、親しみやすく、思わず触れてみたくなるキャラクターへ発展させています。
企業様との共同研究の充実と成果の実現へ。

べろたんの本体には、舌に近いやわらかさを表現する人肌ゲルを使用しています。内部の悪性腫瘍部には、周囲とは異なる硬さを持つシリコーンゴムを用い、触れたときに硬結の違いを感じられる構造としました。表面には薄いシリコーン膜を形成し、人肌ゲル特有のべたつきを抑えるとともに、劣化の防止と外観塗装のための基盤として利用しています。3Dプリンターで造形した型を活用することで、舌の形状や内部構造を再現しながら、健常、舌癌、良性腫瘍、口内炎など、複数の状態を表現できるモデルへ展開しています。


さらに、べろたんの内部には、駆動用の繊維を用いた人工筋肉機構を組み込みました。頭部だけを動かす「うなずく」動作や、頭とお尻を同時または少しずらして動かす動作を実装し、身体を揺らしたり、丸めたり、縮こまったりするような振る舞いを表現できます。PS5コントローラによる操作に加えて、Pythonを用いて特定の言葉に反応する仕組みも搭載しており、「Hello」でうなずき、「Bye Bye」で全体を縮こませるなど、人との簡単なコミュニケーションを可能にしています。
人工筋肉を1本だけ使用した場合は、変形が局所的になり、大きな動きとして見えにくいことが確認されました。一方、2本を組み合わせると変形量は大きくなりますが、内部構造が増えることで触り心地が損なわれる可能性があります。また、過度な力を加えると、やわらかなゲルを傷つけてしまうため、動きの大きさと触感の両立が重要です。今後は、より自然で壊れにくい動作機構と、触診教材としての使いやすさを両立させ、触覚を通じて舌癌への理解を深められる医療啓発モデルを目指します。。
本研究は、舌癌の硬結を触覚的に体験できる医療啓発モデル「べろたん」に、親しみやすい外観と人工筋肉による動きを加えることで、触診教材としての機能とキャラクター性を両立できる可能性を示しています。今後は、より自然で壊れにくい駆動機構を検討するとともに、音声への反応などのコミュニケーション機能を発展させ、触れて、動きを見て、舌癌への理解を深められる医療啓発モデルの構築を目指します。
共用・共同研究に関心のある方はぜひご相談ください。
| Year | Name | Title | Conference |
|---|---|---|---|
| 2026 | 岡本涼兵、石川恵生、小川純 | 舌癌モデル「べろたん」における表現技法ー人工筋肉による振る舞いの付与ー | ロボティクス・メカトロニクス講演会2026 |
| 2026 | 岡本涼兵、石川恵生、小川純 | 動的な印象付与のための医療啓発モデルと柔らかな振る舞いの融合 ~口腔癌モデル「べろたん」による検討~ | 第28回日本感性工学会大会 |

